1959年版「細雪」上映会記念(1)阪急芦屋川駅の今昔

谷崎潤一郎の「細雪」は過去三度映画化されています。


一作目:1950(昭和25)年 モノクロ 新東宝 監督:阿部豊
 幸子:轟夕起子 雪子:山根寿子 妙子:高峰秀子 鶴子:花井蘭子
 
二作目:1959(昭和34)年 カラー 大映 監督:島耕二

 幸子:京マチ子 雪子:山本富士子 妙子:叶順子  鶴子:轟夕起子
 辰雄:信欣三   貞之助:山茶花究 奥畑:川崎敬三 板倉:根上淳
 三好:北原義郎 野村:船越英二


三作目:1983(昭和58)年 カラー 東宝  監督:市川崑
幸子:佐久間良子 雪子:吉永小百合 妙子:古手川祐子 鶴子:岸恵子
辰雄:伊丹十三 貞之助:石坂浩二


このうち、原作の舞台の芦屋市と西宮市でロケが行われたのは二作目の1959年版だけです。
しかし、その二作目だけがDVD化されておらず、VHSは全然出回っていません。


今年2月18日、大阪・西九条の映画館「シネヌーヴォ」でのリバイバル上映(「当りや大将」との二本立て)で鑑賞する機会に恵まれました。
原作は戦前(昭和11年〜16年4月)の話なのに時代を現在(昭和30年代)にしてしまうという大胆なアレンジが行われていますが、それはそれで面白かったです。四姉妹はどう戦争を乗り切ったのだろう…?


この時代のカラーの阪急芦屋川駅甲陽線の映像はとても貴重!!阪急バスらしいバス(設定は大阪市バス上本町九丁目バス停なのだけど、カラーリングが)と、大阪市電もチラッと登場。1959(昭和34)年1月14日の公開なので、撮影は1958(昭和33)年中ですね。月光仮面と同じ年。


芦屋市/【特別企画】「細雪」上映会


5月21日、芦屋市のルナホールで1959年版細雪の上映会が行われます。
阪急芦屋川・阪神芦屋・JR芦屋各駅から徒歩圏です。
これを逃すと、見られる機会は中々ありませんよ〜。私は見に行きます。

2011年5月21日 (土曜日)(1)午前10時30分〜(2)午後1時30分〜


谷崎潤一郎不朽の名作「細雪」。
昭和34年映画化に際し、谷崎本人からお墨付きを得た作品を上映します。
四姉妹を演じる若き日の名女優たち。
長期ロケした芦屋の懐かしい風景が全編に流れます。


費用
一般:700円・大・高校生:400円
前売り券:600円は谷崎潤一郎記念館へ

というわけで、原作の舞台、1959年版映画のロケ地である阪急芦屋川駅を紹介します。ハルヒの「ワンダリング・シャドウ」の舞台でもありますが、それはまた今度。


昭和初期の芦屋川駅。「芦屋今むかし」より(以下古写真の出典は特記以外同じ)
細雪の時代はこんなだったんですね。踏切があります。

2011年5月10日 立体交差となり、橋(桜橋、昭和33年1月架け替え)も駅も高くなっています。

昭和13年7月5日の阪神大水害による芦屋川駅付近の被害。奥に駅舎が見えます。
阪急電車駅めぐり 神戸線の巻」より。


細雪ではこの水害が詳細に描写されています。
映画は二作目が特撮まで使って一番水害を丁寧に描いています。原作では妙子が後で話すのみだった、板倉が洋裁学校から妙子を助け出す場面もあり。三作目は何と水害自体出て来ません。


2011年5月6日 芦屋川駅北の開森橋の横にある「阪神大水害 芦屋川決壊之地」の碑。

1956(昭和31)年 芦屋川東岸から見た芦屋川駅。戦前の写真の駅舎は無くなった?

2011年5月6日


2011年5月6日 芦屋川駅では、ホームの上屋に古レールが使われています。*1

断面が斜めなのが特徴。

(右が天井方向)このレールの刻印は「WENDEL X 1925 75LBS ASCE TB ←」と読めます。
古レールのページ/欧州製の古レールなどによると、WENDELフランスのウェンデル社(Wendel et Cie.="Wendel & Co.",)1925年10月製、75ポンドのようです。


「STEELTON IIIII 1919 OH 75LBS ASCE」
1919年5月、アメリカのベスレヘム・スチール社スチールトン(所在地)製。
この他、国鉄向けを示す「工」印が付いた1919年製の「TENNESSEE」(US 製鉄会社テネシー)のレールも何故かあります。芦屋川駅の開業は1920(大正9)年7月16日。いつからあるのでしょうか。

芦屋川駅は、その(水害)後(中略)長い間枕木を積んだままの仮ホームであったが、
ようやく昭和31年になって右岸西側沿い道路工事が行われることになったので、
駅も改築することにした。


31年12月、工事に着手、工事期間中は芦屋川左岸(大阪方)に仮ホームと駅舎を設けた。
新駅は32年7月にオープンした。

阪急電車駅めぐり 神戸線の巻」にこうあるので、それ以後だろうと分かります。


1957(昭和32)年頃 工事中の三宮方面行きホームから梅田方面を見た所。左に火の見櫓が見えます。
古レールの上屋が設置されたのはこの工事の時だったんですね。

2011年5月10日 ホームの穴が目印。上屋から看板や蛍光灯がぶら下がっているため、今はレールが目立ちません。


関連:きーぼー堂2010-1-10  阪急電鉄の前身、箕面有馬電気軌道の開業当時のレールなど


我が人生の垢
 ↑古レール上屋探索者・TAKATAKATAKAさんのブログ。芦屋川駅の記事もあります。



1965(昭和40)年頃 立体交差工事後に北側から見た駅。「芦屋のうつりかわり」より*2。1959年版細雪ではこちらの駅舎が登場します。5月22日訂正、実際は南側の駅舎が登場します。

2011年5月6日 駅舎が建て替えられ、ホームの上屋が増設されています。手前の歩道橋は同じですね。昔の写真は、どうやってあんな高い位置から撮ったのだろう?



1956(昭和31)年頃 三宮方面行きホームに犬を連れた女性。どういうシチュエーションで撮られた写真なのだろう?

2011年5月6日 今ここにベンチはありません。


読売新聞 2010年11月9日
去年芦屋の商店街で、細雪の蒔岡四姉妹を萌えキャラ化した漫画「芦屋四姉妹物語」が出されました。芦屋川駅前の商店街でもポスターが貼ってあったり。
以下に電子ブックのリンクがあります。
http://www.ashiya-net.or.jp/manga/manga.html


座敷童の四姉妹が実在の商店街に住み着いて集客に奮闘する内容で、元ネタが残っているのは名前と三女が引っ込み思案などの性格設定ぐらい。全座連(全日本座敷童連盟)が出てくるのはさよなら絶望先生のオマージュなんでしょうかw


その2、芦屋川駅周辺ロケ地紹介に続きます。


*1:この写真の中に私が写っています

*2:「芦屋今むかし」のトリミング違い