西宮文学案内第3回 アニメ『涼宮ハルヒ』の「聖地」西宮レポ


11月23日、西宮北口ACTA東館6階の西宮市大学交流センター大講義室で行われた講演 西宮文学案内第3回 アニメ『涼宮ハルヒ』の「聖地」西宮 を聞きに行って来ました。講師は作家の土居豊さんです。



土居豊さんは1967年大阪生まれ、著書は音楽小説「トリオ・ソナタ」、評論「村上春樹のエロス」「坂の上の雲を読み解く!」など(西宮文学案内チラシより抜粋)。



ちなみに第1回は「村上春樹と『阪神間』の文化」、第2回は「水木しげるの西宮時代」でした。
第2回の資料で引用されていたブログはこちら。水木さんが今津で住んだ家このようにしては特定されていたのですね。
今津いまむかし物語 水木しげる(1)★鬼太郎が生まれた家



受講票ハガキを見せて500円を払うと、第1、2回を含めた3回分の資料がまとまった冊子を貰えました。観客の年齢層はかなり高く、白髪の方も多い。私の主観ですが、ハルヒファンと見て違和感が無いのは全体の3割ぐらいでしょうか。
入口で会った甲山タイガースさんを左、ちゃうけさんを右にして右端最後尾の列に座りました。



土居さんが現れ14時に講演開始。まずちょっと訂正がありました。



配布資料には涼宮ハルヒの憂鬱 (アニメ) - Wikipediaの「舞台のモデル」の項目が引用されており、「兵庫県は、これら舞台として使われた実在の施設を、観光コースとして整備することを表明している」とありますが、これは少数の職員がまとめた構想に過ぎず兵庫県の公式見解ではない、という指摘が兵庫県の中の人からあった事が伝えられました(私も一度会った事のあるNV1さん。というか来場していました)。

神戸新聞2008/12/30 08:51:ハルヒ、工場萌え…「サブカルは兵庫の宝」 県が構想(ウェブ魚拓)



Wikipediaでは舞台として北高、尼崎の商店街、梅田駅周辺、Sports Domeかわらぎ、阪急6000系が挙げられていますが、Sports Domeかわらぎは明らかに浮いてる…。



土居さんはハルヒはアニメ2期を少しだけ見た所から始まり、予備知識ほぼ無しで見た劇場版消失でハマったという本人言う所の初心者だそうです。原作は全巻読んだと。アニメはエヴァから空白で、深夜アニメを見始めたはたまたま見た灼眼のシャナがきっかけだったそうです。



西宮北口の塾で講師として働いていた事があり、珈琲屋ドリームなどはアニメを見てすぐ分かったとか。




2007年8月14日きーぼー撮影 桐光学園(神奈川) vs. 日南学園(宮崎)
土居さんの子供時代のアルバムから剥がしたという、今は亡き西宮球場と、甲子園球場のスタンドからの写真がスクリーンに映し出されます。撮影&録音禁止だったのでここには代わりに自分の写真を。映画版「風の歌を聴け」では西宮球場がロケ地になっているらしいですね。



ハルヒでは「西宮」という地名は出てこないが、西宮北口は北口、甲陽園は光陽園と少し変えられているだけなので分かる。
原作「涼宮ハルヒの憂鬱」の一部を朗読し、「私鉄やJRのターミナルがごちゃごちゃと連なり、デパートや複合建築物が立ち並ぶ日本有数の地方都市」(閉鎖空間が出来た場所)とは梅田。小6の時ハルヒが人の多さに衝撃を受けた球場は、地方都市で5万人入るといえば西宮の甲子園球場ぐらいしか無い、という理論を展開。



ハルヒを全く知らない人にも分かりやすい例ですね。
梅田についてはここに引用あり涼宮ハルヒの憂鬱舞台の変貌(改)その5 アクティ大阪 - きーぼー堂



西宮の小6、中学生なら必ず小連体、中連体で甲子園に行っているはずだから、谷川さんはそれを小6の時親に連れられて野球観戦に行ったように置き換えたのだ、というのは私きーぼーやnonkiさんの持論です。
小連体でハルヒは甲子園に行ったはず - きーぼー堂




講演に話を戻します。ハルヒけいおん!の舞台設定の違いについて。ハルヒは原作からアニメまで阪神間周辺で統一されているが、けいおん!は修学旅行で京都に行くので舞台はおそらく関西ではない(普段の京都の街・滋賀の学校は風景を借りているだけ)、と。



うーんややこしい。京都から京都に修学旅行は学校が関西にあるという設定が無かった原作をそのまま再現してしまったために生じた矛盾ですね。



要はアニメには舞台一極集中型と分散型があるというお話でした。



この講演の主軸は「ハルヒ」と「ハルキ」、涼宮ハルヒ村上春樹作品の親近性についてでした。これなら講演タイトルに村上春樹入れといても良かったんじゃ、という感じ。
私は村上春樹作品は「レキシントンの幽霊」「パン屋再襲撃」など短編を十本ばかり読んだ事しか無いのでほー、そうなのかと感心する事ばかりでした。



●どちらもSF的作品。 「1Q84」と「消失」「エンドレスエイト」の共通点。「驚愕」はパラレルストーリーとして完成するか?
キョンの口癖「やれやれ」は恐らく村上春樹作品のリスペクト
●標準語一人称語り、方言を無くして舞台を架空の世界にする
●一人ボケツッコミという関西テイスト、ハルヒのキャラは春樹のキャラと同じ「非実在系」



土居さんは触れませんでしたが、「長門有希の100冊」(ザ・スニーカー2004年12月号に掲載、2006年12月号で付録ポスターに)に村上春樹ダンス・ダンス・ダンス 」が選ばれているので谷川さんは間違いなく村上春樹作品を読んでいますね。あ、土居さん「たにかわながる」と言っていましたが「たにがわ」ですよ。



次は村上春樹を離れてパロディの話。元ネタを知っているほど面白い、もし知らなくても楽しめる。
涼宮ハルヒの溜息」でハルヒは映画の撮影で移動する時や一人帰る時に大脱走のテーマ、ロッキーのテーマ、ブレードランナーのエンディングテーマなどを口ずさんでいます。これはハルヒが小説(アニメ)の中の存在だけど、ハルヒがそれまでにロッキーなりブレードランナーなりを見たか、見ていないにしてもどこかで曲を聞いた事を現し、深みが生まれると。



確かに受け手に取って身近なネタが出てくるとキャラに対して親近感が湧きますよね。これはSFの技法らしい?
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余談として、パロディでも無いかも知れないけどAngelBeats!最終回ラストは村上春樹4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」に似ているとか、時間は筒井康隆の得意分野だが「エディプスの恋人」はハルヒがお母さんになったこうなるんじゃないかという感じだとか。



土居さんによるアニメ「ハルヒ」まとめ。
ジャパニメーションらしくクールでスタイリッシュな映像と音楽の魅力が溢れている
●萌えの要素もきちんとおさえてある
●実写では描けない映像、また小説では描けない描写としてのアニメ作品の価値。
●実写と違いアニメの風景は古く感じない、古びない(西宮の魅力を後世に伝える)
●「涼宮ハルヒ」は究極のハイブリッドコンテンツ。村上の1Q84に匹敵する重層的な作品世界を持ち、世界に発信するにふさわしい。



最後に質問コーナー。
若い女性から、土居さんはこの講演の為にハルヒを「勉強」したのですか?
という質問には、空白はあったものの昔からアニメ好きだったのでそういう意識でも無い、というような事を(すいません細かい所忘れました)。



若い男性の「ハルヒで好きなキャラクターは何ですか?」という質問に土居さんがハルヒと答えると、男性が「私は長門」ですと答えて笑いが起きるwこの講演は時々笑いを取る場面があり良い雰囲気でしたね。



締めの言葉は「これであなたもSOS団西宮支部団員です」でした。



こういうレポートはとても苦手で、かなりかいつまんでお伝えしました。





「西宮文学案内」の模様は2011年2月に下記の日程で放送予定だそうです。



●Baycomチャンネル(デジタル11ch)
コミュニティチャンネル(アナログ9Ch)
第一回 2月21日(月)・28日(月)12時〜13時
第二回 2月22日(火)12時〜13時
第三回 2月16日(水)・23日(水)12〜13時
●Baycomチャンネル2(デジタル112ch)
2月16日(水)〜28日(月) 第一回 17時〜18時
            第二回 18時〜19時
            第三回 19時〜20時


会場となったACTA東館。会場の1階下の5階の西宮市立北口図書館は原作「憂鬱」で舞台となり(アニメ中央図書館)、ACTAの建物はアニメで何度か映っています。
ハルヒの舞台の至近でハルヒの講演を聞けるとは粋な計らいですね〜。

会場ではぎをらむさん、音子さん、NV1さん(ひょうごっつ☆くーる)、まさたかさん(山梨から)、glenさん、長門さくらさんなど知り合いの方に多数遭遇。その後一部の方たちと珈琲屋ドリームへ行きました。



ドリームでは谷川流さんと同時代の北高を知る方から貴重なお話を聞けて、さながら第三回西宮文学案内第二部のようでした。



関連
西宮文学案内第3回・SOS団西宮支部!?: ひょうごっつ☆くーるβ版
↑こちらのほうが分かりやすくまとまっています。
作家・土居豊の映画/音楽一刀両断! 「涼宮ハルヒの聖地西宮」盛況のうちに終了!



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