大阪デザイナー専門学校での「いとうのいぢの講演会」レポ


10月28日、梅田の大阪デザイナー専門学校でいとうのいぢさんの講演会が開催されました。のいぢさんは同校の卒業生で、この講演会は学祭の目玉です。のいぢさんが来る、しかも近場とあっては行かない手はありません!
ちなみに、石原立也さんも同校の卒業生です。

のいぢさんのツイートから抜粋。
講演は16時開始、私が入った時点でほぼ満員だったのですが、どうにか座る事が出来ました。教室の外(廊下では無く、展示スペースのよう)にはテレビが設置されていて、LIVE中継で講演を見る事が可能でした。そちらからも歓声が聞こえたので、のいぢさんの教室への出入りは直接見る事が出来たようです。


教室の中と外合わせて200〜300人だと思います。司会が手を上げさせたのを見ると、外部からよりも在学生が多い感じ。

教室のスクリーンとモニターには、これが映されていました。

完全再現は無理ですが、出来る範囲で講演の内容の要約を紹介して行きます。


司会の男性からのいぢさんの紹介があり、拍手と共にのいぢさん登場!

司会「いらっしゃいませと言うか、おかえりなさいという感じなんですけども(大幅中略)有意義な時間にして行きたいと思います。いとうさん、自己紹介をお願いします」
「こちらの卒業生でもあり、今はイラストレーターとしてお仕事をさせてもらっているいとうのいぢと申します、よろしくお願いします」(拍手)


3年前にスニーカー文庫に移転してからのいぢさんの担当という、糸井明日香さんも来ていました。のいぢさんがこうして講演をするのも非常に珍しい事なので、貴重な話が聞けるかなと思ってはるばるやって来たそうです。司会の方は元々はのいぢさんの本名しか知らない立場だったと言っていたから、先生?


ハルヒ主義」「紅蓮」「火焔」の画集などからの画像を映しながら話を進めて行きました。教室が真っ暗でメモ取りづらかった〜。


ザ・スニーカー2003年6月号のイラスト
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一番初めにハルヒの仕事を頂いた時に描いた絵。特にキョンとか今とは全然違う感じ。ハルヒは、ストーリーの進行のせいもあって今はより表情が穏やかになっている。


ハルヒのDVDジャケット
レモンを持たせて、それ以外は自由にやって良いと言われた。ザ・テレビジョン表紙を真似たネタだったけど、後に「驚愕」のキャンペーンで本当にハルヒザテレビジョンの表紙になった(2011年21号)。同時に週刊アスキーファミ通でも表紙を描き下ろさせてもらった。


灼眼のシャナ
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最終巻が出るタイミングでアニメ3期をやろうとずっとジェネオンさんと話していて、実現出来て良かった。ぼちぼち3期のジャケットも描いているけど、長期のシリーズになって来ると本当にネタに困る。電撃文庫の場合はシャナしか描いちゃいけない縛りもあったので大変。


自分のサイトにイラストを載せていたのが電撃の編集者の目にとまり、「原稿を読んで、気に入ったらお返事下さい」という事だった。文章が良かったので、自分のイラストが良ければもっと売れるだろうとモチベーションが高く仕事が出来た。


(原作10巻でシャナが出ないのにシャナが表紙だったりするのも、縛りがあったからなんですね。)



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●ショートカットよりは、長い髪の子の方がなびかせたり工夫出来るので画面作りがしやすいし楽しい。


●オリジナルキャラは、自分で設定を考えながら描いている。自由に描いて良いという注文が一番難しく、何か設定、方向性がある方がやりやすい。


ライトノベル挿絵
白黒の絵はグレー50%ぐらいで描いたはずなのに本になるとかなり黒くなったり、増刷された時に濃さが変わったりしていて加減が難しかった。




ななついろ★ドロップス
男性向けのゲームなのに、こんなに少女マンガチックにして良いのかなと思いながら、楽しんでやった。アニメは一応はチェックはするけど、自分のとは別物と考えて任せていた。


●「涼宮ハルヒの秘話」のスケスケ佐々木
谷川さんって硬いイメージがあったけど、スケスケのとかいいんだーと思った。谷川さんは凄いトリッキーな、掴み所の無い方。

(蜻蛉迷宮とかもっと過激ですよ。)

手塚治虫記念館の企画展「osamu moet moso feat.いとうのいぢ」について

手塚先生は神様と言われている人なのでプレッシャーを感じたが、結果的に楽しんで描けて良かった。手塚治虫記念館では恐れ多くも、私の個展のような事もしてもらった(10月24日に終了)。


(のいぢさんの手塚作品への思い入れも聞いてみたかったな〜)


●制作過程
(のいぢさん持参のスケッチブックなどを画面に映して、「驚愕」後編の表紙の佐々木のラフから完成までそれぞれの状態を見せながら説明してくれました。)



ラフは鉛筆ぐらいの太さのシャーペンで書き、0.5ミリで清書。0.2ミリでクリーンナップ(清書)。太いのでやると粗が目立つからだけど、芯がボキボキ折れちゃう。トレース台を使う。粗はPCで修正する事も。
目の中を別な絵にしてアニメーションのように重ねる事も。色塗りはデジタル。詳しくはドローイングDVDを参照。
ひどい時はマッチ棒のような体でラフを描く事もある。
紙は大きいのが苦手で、A4までしか描けない。A4半分くらいが画面が掴みやすくて好き。


(例えばA4スケッチブック1枚の上半分に「驚愕」後編の見開き口絵の「MIKURUフォルダ発見!」下半分に「ハルヒ!」の絵が描かれていたり。横にして、真ん中で縦に割り2ページとして使う事もあるようです。)


一人立っている場合、構図が決まれば半日でラフから仕上げまで行く。迷った時は二日ぐらい。
仕事が重なれば、優先順位を考えてタスク作業。


●高校時代
高校では美術部に入り、その中身は漫画描いてばっかりだったけど、友達と絵を描いて雑誌に投稿したりオタクライフを満喫していた。


●大阪デザイナー専門学校時代
絵を描きたくて、学も無いので専門学校に入りたくて、ここに決めた事に深い理由は無く募集を見て「あ、何か良さそう」という直感だった。グラフィックデザイン学科イラストコースに入った。今のようなキャラクター学科、マンガ学科などは無くて、今の学生が羨ましい。

人体デッサンの授業(今もあるという)が大好きで、その頃からキャラクター、人物を描くのが好きだった。
漫画の絵だけで無く色々な事を学べたのは良かった。


●就職活動・勤務時代
FFや格闘ゲームが好きで、キャラデザの仕事があると知り、したいと思うようになった。
「ゲーム業界就職読本」なんかを読んで、大阪に住んでいるので通えそうな会社にあたった。そしてソフパルに入った。18禁のゲームを作る会社とは知らなかった。会社の人は良い人だった。それまでパソコンで絵を描いた事は無く頑張って覚えた。


大人向けのゲームが多い中で、萌えとか可愛い系のを作ろうという事で、新ブランド「ユニゾンシフト」が出来た。最初に出たのは「Be-reave」(1999年、同作で原画家としてデビュー)という作品。珍しい事だけど、絵が苦手な人まで多くのスタッフが参加して一つの作品に仕上げたもので、私はプログラムや、音楽の指定までして、絵以外の苦労も知る体験が出来た。
このユニゾンシフトから「ななついろ★ドロップス」(2006年)が出た。
(ななついろ★ドロップスに関してはあまり語っていません。)

講演の前に撮影した大阪デザイナー専門学校。向かいのビジュアルアーツ専門学校も学祭だったようで、マミさんのコスプレイヤーが路上を歩いていました。


以下11月2日19時代に追記



●会社では、最初他人(ひと)の絵をずっと塗ってる仕事で、社長に原画が描きたいと言い、「もっと上達したらさせてあげる」と言われ、後に実現した。当時社長と共に雑誌に売り込みをして、オリジナルで描いたのが最初の仕事。
今は会社を離れフリーで、自宅で仕事をしている。


(事前に学生から寄せられた質問と、その場で挙手した人の質問にのいぢさんが答えました。以下はその一部。)


●絵を描くようになったきっかけは?
中学卒業前からゲーセンで格闘ゲームをやり、アニメショップに行き、その辺りに絵を描き始めたきっかけがあるのかも知れない。当時アニメショップは全然無かったけど、たまたま近くにあった。

(のいぢさんは加古川市出身ですが、近くのアニメショップとはどこだろう?)


●イラストの仕事だけで食べて行けますか?
今はともかく名前を覚えて貰うまでが大変で、儲からないので、ショットバーで働いたり、会社の仕事もしながら夜に絵を描いたりもしていた。


●経験の無いジャンルの注文を受けた事はありますか?
灼眼のシャナのモンスターみたいなのがそうだけど、高橋(弥七郎)さんの中ではかなり具体的なイメージがあって、走り描きみたいなラフをくれるので参考になった。(司会からメカ物はありますか?と言われ)メカ物は描いた事は無いけど、頑張ってみたいという気持ちが無いでは無い。


●好きな漫画はありますか?
バカボンドカイジバクマンとか。女の子向きも好きだけど、弟がいるので昔からジャンプなどの少年マンガに慣れ親しんで来た。


ハルヒの中で誰が一番好きですか?
一番好きという質問が困る(笑)
SOS団は5人じゃないと嫌だなー、という事で5人が好き。


●(司会から)最後に、いとうのいぢにとって、絵を描く事とは?
好きじゃないと出来ないと思う。私はすんなりこの世界に入れたけど、しんどいの連続で。ネガティブな話だけど、「あー、やっぱりあたし好きだわー」と思える瞬間がある事が、長く続けられる事に関わってくる。


●(司会から)今後の予定で、話せるものがあれば。
来年Anotherというアニメが始まり、キャラクター原案をさせて頂いたので、良かったら見て下さい。


以上です。
写真でしか見た事が無いのいぢさんに遂に会えたし、ハルヒとシャナという好きな作品の裏側も聞けて、とても楽しい講演会でした。


のいぢさんの講演会に来ていた知り合いは土井豊さんだけで、講演会終了後途中まで話しながら帰りました。土井豊さんもGoogle+日記で講演会について書いています。
https://plus.google.com/101034595459822145847/posts#101034595459822145847/posts/U7wW7yK2jWM


教室内の様子と記念写真がこちらに掲載されています。
のりだーのノリノリブログ♪♪♪ 学校祭〜帰ってきた卒業生シリーズ!?いとうのいぢさん★〜(2011年10月31日17:14)


キャニメーションの森 卒業生・いとうのいぢ講演会(2011-10-28)*1


こういう講演会に参加するのは2009年11月1日の京都産業大学での日笠陽子さんの以来でした。

手塚治虫記念館でのサイン会で長門さくらさんがのいぢさんに描いてもらった色紙です。許可ありがとうございました。


*1:「キャニメーションの森」へのリンクは11月3日21時代追加