森田季節「エトランゼのすべて」舞台探訪@京大構内・オマケに西宮


森田季節さんの「エトランゼのすべて」(星海社FICTIONS、2011年10月発売)の舞台探訪記事です。


京都大学に入学した針塚圭介は、「京都観察会」という目的の良く分からないサークルに試しに出向くと、黒髪美人の謎めいた会長に、名乗ってもいないのに地元の情報・生活行動を次々言い当てられてしまいます。ゆるゆると大学生活を過ごすうちに、京都観察会の本当の目的に迫って行くというお話。全9話構成。


第1話を公式サイトで試し読み出来ます。
http://sai-zen-sen.jp/fictions/etranger/


森田さんが京都大学出身というだけあって、舞台描写はかなり詳しいです。イラストは「空色パンデミック」(ファミ通文庫)、「俺はまだ恋に落ちていない」(GA文庫)などの庭さん。



本作発売から1ヶ月後という丁度良いタイミングで開催された、2011年11月23〜26日のノーヴェンバー・フェスティバル(NF)に11月25・26日の二度訪れました。
「長ったらしいうえに、どこか恥ずかしくもある」ので、針塚は学園祭と呼んでいます。


11月26日にはヤマカンこと山本寛監督の講演会がありました。
京大11月祭のヤマカンこと山本寛氏講演会採録 ルサンチマン誕生秘話、ハルヒとフラクタルの失敗の反省など - きーぼー堂
ちなみに京大は初訪問で、母校以外の大学祭訪問は関西大学京都産業大学神戸女学院神戸夙川学院大学に続き5校目。

時計台前。2011年の統一テーマは「年に一度の計画発電」でした。

QB!?

この共東(きょうひがし)31講義室の通路が、いまや自分にとってのルビコン川となっている。もしかすると、ここで引き返すかどうかで人生が激変するかもしれない。できれば、もっと劇的な場所であってほしかった。かといって、火サスのような崖の上でも困るのだけど。(P11)

京都観察会の新勧の集合場所となった共東31講義室。ここで針塚は会長に初めて出会います。京都観察会のチラシはこの教室の前の掲示板に貼られていました。針塚については判断しにくいですが、少なくとも一人の人生は激変させる事になったと思います。良い意味で。

実際に訪れてみると、もちろんごく普通の教室でした。共東31講義室はゲームのサークルが使用していて、無料の同人誌を一冊貰って来ました。京都観察会が学園祭でどの教室で展示を行ったかは、作中には書かれていません。

よく見ると、新歓はあと一回しかなかった。(中略)場所は目の前の共東31教室。この時点でメジャー感はない。和歌山線沿線の人間としてはちょうどいい。ちなみに僕は万葉まほろば線だとか、名前だけすごそうにするこけおどしは嫌いだ。(P30)


針塚は、京都市百万遍近辺(P20他)に下宿し、実家はJR和歌山線隅田(すだ)駅近辺のようです。万葉まほろば線(和歌山線と接続している桜井線の愛称)に関しては同感。桜井線は畝傍駅和歌山線香芝駅五位堂駅しか行った事が無いのですが、隅田駅もいつか行ってみたいです。古い駅舎があるようだし。
隅田駅 - Wikipedia


<↓3月8日22時代追記>
実在看板少女のさがし方2012-01-25 萌えキャラがペイントされまくった駅舎「隅田駅」
隅田駅、Wikipediaの駅舎写真からは想像もつかない事態になってるんですけどwwwww
もっと早くこうなっていれば、針塚の話のタネの一つにでもなった事でしょう。<追記終わり>


他に、中道(香澄)さんの実家は福井県鯖江市の福井鉄道西山公園駅(P67)という事が分かります。森田さんが福井県在住だからでしょう。
西山公園駅 - Wikipedia


「桜木メルトの恋禁術」(2009年、MF文庫J)の舞台の十雪市も、日本のメガネフレームの95パーセント、世界の20パーセントを生産していて、動物園で飼育しているレッサーパンダが日本一多い(P102)って、明らかに鯖江市がモデルです。

そんな食堂の話を会員相手に語っていた(会長と話した内容は適当にぼかした)。
場所はカフェテリア・ルネである。生協の本屋の上の階にあるので、ゆったりと読書にふけることも可能だ。名前ほどオシャレな店内ではなく、基本はただの食堂だが、たしかにパフェなど喫茶系のメニューも多い。


少なくとも大学で彼女ができたら、中央食堂よりはルネで食事をするべきだろう。バイト先を悪く言うのはポジショントークのようで嫌だが、地下にある中央食堂は照明も暗く、どことなく盛り下がるのだ。(P59)


京都観察会の週2回の例会が行われるルネ。山本寛監督講演会の直後に行きました。エトランゼ〜の舞台である事に加えて、山本監督が京大時代の「怨念戦隊ルサンチマン」制作時にルネで議論し合ったというエピソードが出て来ていたので、感慨深いものがありました。
イメージと違い、他の校舎とは4車線の道路により隔たれていました。

カフェエリア・ルネへの階段。

2枚合成

会長はここのパフェが好きみたいですね(P65)。

確かに思っていた以上に「名前ほどオシャレな店内ではな」いですが、かなりメニューが豊富で驚きました。私が食べたのは焼豚ラーメン(441円)です。ここで本を改めてチェックし、次に周る場所を考えました。

ルネのテラスもルサンチマンのロケ地になっていると分かったのは後の事。4分16秒辺りと比べてみよう!


第2話で針塚がバイトを始める「中央食堂」は2011年8月から2012年3月まで長期閉店しています。でも挿絵の学生証からすると、本作は2010年度の話のようなので問題ありませんw 写真はルネにて。


地下にある事は作中でも描かれています(P59)。皿洗いの描写がリアル。バイトの相手は今日も女性だが、モテ期が到来したとかではなく、タイムふろしきが有れば三十年分時間を戻したい(P86)、という下りは今では凄く共感出来ますw


第4・6話で針塚が会長に出くわす附属図書館。
ショックを受けた針塚が座り込んだ、「図書館前の階段」(P183)も見えます。

図書館入口。会長は学生証を忘れたと言って、持っていた本を借りさせています。学外の者でも、利用申請書に記入すれば入館可能のようです。但し、貸し出しは出来ません。*1


針塚の通学ルートも探訪していますが、掲載はまた今度。
森田季節「ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート」舞台探訪@神戸市垂水区 - きーぼー堂
森田季節「ともだち同盟」舞台探訪@山陽電鉄滝の茶屋駅(1) - きーぼー堂
森田季節「ともだち同盟」舞台探訪(4)@三宮、山陽電鉄須磨浦公園駅 - きーぼー堂


最近は森田季節作品の発売ラッシュとなっています!
1月23日:神聖魔法は漆黒の漆原さん (MF文庫J)
2月16日:お前のご奉仕はその程度か?3 (GA文庫)ドラマCDも発売中→公式サイト
3月7日:落涙戦争(講談社)
3月17日:ノートより安い恋(一迅社)
3月30日:デキる神になりますん (ファミ通文庫)

●オマケ1・森田季節作品と西宮
「エトランゼのすべて」の本筋以外で一番驚いたのが、先週阪急を乗り継いで神戸に行って来たが、北野異人館に寄れなかったのが残念だった、と針塚が述べた後です。

知り合いの神戸人が驚くほど北野について何も知らないので、情報も収集できなかった。勝原さんも実家は西宮の門戸厄神という駅の近所らしいが、「幼い頃に一度行ったらしいけど、覚えてない」とのことだった。(P174)


2012年3月7日撮影
勝原さんの実家は阪急今津線門戸厄神駅の近所!?身近過ぎる!!まあ、本当に出るのは駅名だけで舞台とは言えないんですけどね。

左が勝原さん。フルネームは勝原理沙。針塚は勝原さんのバイト(中古CD屋)のバイトの手伝いをする事になります。


森田さんが2010年に出した「不動カリンは一切動ぜず」(ハヤカワ文庫JA)にも、主要な舞台は神戸市垂水区ですが西宮市に関する描写が二つあります。


一つ目は、言葉(ときは)が勇(いさみ)に良く会いに訪れる五十嵐邸は、「兵庫県西宮市の北の山のふもとにある」(P264)。

二つ目、本来は太陽神だったヒルコ=昼子が西宮に流れ着き西宮神社に祀られている事、日本神話の最高神天照大神=太陽神である事を元に(ここまでは良い)、滝口統湛(とうたん)は娘の兎譚(とたん)にトンデモない話を2ページに渡って語る場面。

「つまり、西宮とその周辺の土地は神に連なる土地なのです。巨大神殿である甲子園があるのもそのためです。」
「は?何言ってるんですか?」


「(中略)その神はおそらく光のような姿をされているでしょう。神はあまりにも尊い存在ですが、そうかしこまる必要はありません。なぜなら我々にも神の一部分の情報が入っている、つまり、神の半身なのです。ここを本拠地にしているチーム名もハンシンでしょう。ハンシンのユニフォームが白と黄色という光を象徴するものであるのも神の力を示すためなのです。その神が夏至に程近い七月七日、毎年我々に最も接近するのです。ああ、そういえば、昔、ここに住む少女を舞台にした小説があり、少女の名前はカタカナでハルヒと言ったはずですが、この名前も漢字にすれば、おそらく晴日、光の神を暗示した名前なのは明白です。アサヒナという名の登場人物も朝日を意味しているように――
そんな統湛の話を兎譚はほとんど聞いていなかった。(P303)

実に森田さんらしいこじつけの連鎖というか、ここでハルヒまで出て来るのが驚きでしたw ちょうど7月7日はハルヒにとっても重要な日付です。この後は、意外にも全く西宮は出て来ません。


「原点回帰ウォーカーズ」(2009年、MF文庫J)では西宮のごろごろ岳がモデルらしきゴロゴロ山が登場します。
森田季節「原点回帰ウォーカーズ」舞台探訪@神戸市西区・学園都市 - きーぼー堂


ブックファースト阪急西宮ガーデンズ店の森田季節さん「ともだち同盟」サイン色紙 - きーぼー堂
寺社巡りが趣味の森田さん。この色紙によれば神呪寺も訪れているそうだし、門戸厄神東光寺にも来ているのかも知れません。


●オマケ2 学園祭巡り

アニ研とニコニコカフェの看板。

漫研で購入した「みおちゃんカレンダー」の表紙。


僕にとって「みお」と言えば、
1.上月澪(ONE〜輝く季節へ〜)
2.秋山澪(けいおん!)
3.石動美生(えむえむっ!)
の3人が筆頭ですが、この3人はもちろんマニアックなキャラまで月ごとに色々な「みおちゃん」が何人もの部員によって描かれています。表紙では上月澪の持ってるスケッチブックが澪つくしなのが芸が細かいw

*1:私の母校は利用証(1年間)交付の受付期間が春と秋の各約10日間だけで、しかも1000円かかるといい、それに比べれば手軽です。