森田季節「ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート」舞台探訪@神戸市垂水区

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森田季節さん著、MF文庫Jベネズエラ・ビター・マイ・スウィート」(イラスト:文倉十さん、2008年9月30日発売)の舞台探訪レポートです。本作が森田季節さんのデビュー作。



2008年にサークル神奈井総社から発行された同人誌「神奈井総社十周年記念誌」に掲載された水越柚耶さんによる「『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』世界最速?舞台探訪レポート」を全面的に参考にさせてもらいました。自分で見つけたわけではありません。


これから読む方のためにネタバレは少なめにします。
全4章のうち、主人公・明海の小学生時代の回想が書かれた、第2章「千回死んでめぐりあうチャンスもあるの」の舞台を扱います。他の章では京都が舞台ですが、それはまたの機会に。探訪は2010年5月9日に行いました。

・七年前のことに想いをはせる。私は小生意気な小学生。まだ京都に引っ越す前だ。巨大な鍵穴形の古墳が海を見下ろす街に私は住んでいた。(P77)
・私の学校は一学年が百五十人もいるマンモス校だ。瀬戸内の海岸線に沿って走る鉄道の駅から歩いて3分のところ。(P78)

後のP165の明海の父の「うちも兵庫から京都に引っ越してきたんだよ」というセリフで、明海兵庫県に住んでいた事が分かります。

Googleマップから。「巨大な鍵穴形の古墳が海を見下ろす街」…海を見下ろす古墳とは兵庫県神戸市垂水区五色塚古墳(画像左上)。兵庫県にこの条件に合う前方後円墳は他にありません。その街は兵庫県神戸市垂水区と断定出来ます。
これよりも神戸市ホームページの写真を見た方が、この描写を理解しやすいです。
神戸市:五色塚古墳


2010年3月10日撮影 JR朝霧〜舞子(垂水区内)の車窓からすれ違いざまに撮った、姫路方面行きの山陽電車
「瀬戸内の海岸線に沿って走る鉄道」は五色塚古墳の横も通る山陽電鉄本線あるいはJR山陽本線の事。


そして、駅はJR・山陽 垂水駅。写真は垂水駅北口、右奥に小さく明石海峡大橋が見えます。

小学校は垂水駅の北東の垂水小学校。

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(もしかすると垂水駅北側の天ノ下町は森田季節さんの「原点回帰ウォーカーズ」の天ノ下芝蘭の元ネタか?)
P110で明海が南は行き止まりだから北に行ったと説明する所で、
「学校から三分南下して、国道二号線の信号を越えると、もう漁港に出る。」
とありますが、国道2号線はそのまま、漁港は垂水漁港で、位置関係はバッチリです。


1学年150人という設定ですが、1学年4クラス、全校で900人という所でしょうか。垂水小学校は昭和26年に児童数が4000人を超えて日本一のマンモス校となりました*1が、平成に入ってからは500人を下回っているようです。
垂水小では無いけど神奈川県で1学年7クラスの児童数日本一のマンモス小学校(今はどうか知らない)に通っていた自分としては1学年150人程度ではまだまだに思えますw


ベネズエラ〜では森田さんは京都在住という事しか書かれていませんが、後に出た「原点回帰ウォーカーズ」1、2巻の著者紹介に「1984年神戸生まれ、京都在住」*2とあるので、「兵庫から京都に引っ越した」というのは森田季節さん自身の体験を元にしていると推察出来ます。


6月22日追加 明海がイケニエビトの事を調べる「近所の図書館」は、垂水小学校の南東隣のレバンテ垂水2番館1階の垂水図書館(垂水区役所併設)と思われます。神戸市は広さの割に図書館が少なく、垂水区ではここだけです。


ここからは明海と美祈が二人で小学校から逃げた道について。

明海と美祈が歩いたはずの道。これでもバス道です。

・仕方ない。バスも電車も使えない。バス道沿いに北へ走ろう。(P110)
・北へ向かう黄色いバスが通り過ぎていく。(P111)


黄色いバスは山陽バスの事。あ、この写真南へ向かうバスだ・・・。この場面では明海と美祈の後ろから来て追い越して行った事になります。
P131でもう一度黄色いバスが出て来ますが、その時の「行き先には学校のすぐそばの最寄り駅の名前が書いてあった」の行き先がこの「垂水東口」です。つまり南へ向かうバス。

住宅地を過ぎて、少し広い道路に出た。途中の写真屋さんの時計を見ると、まだお昼休みも終わっていない。(P112)


ここで右へ下ると、

「少し広い道路」に出ます。

写真屋はしばらく歩いて歩道右側にあるこの建物。


今はリハビリテーションセンターですが、柚耶さんが訪れた2008年当時はセレクトカメラでした。発売間もない頃に潰れたそうです。次は北へ1.5キロ。急ぐ場合はクラブ前バス停から山陽バス11、12、13系統を利用して下さい。

建物が少なくなり、阪神高速の高架が見えてきます。

「だったら、公園で休んで対策でも練ろう。ベンチもあるしさ。」
(中略)丸太をあしらった門柱には「あじさい公園」と書いてあった。


名谷あじさい公園(垂水区名谷町)。丸太をあしらった門柱なんてのは無いんですが、現地を歩きながら書いているわけでは無いのでそのくらいの記憶違い(?)はあるでしょう。「明石海峡大橋架橋記念」ですが明石海峡大橋からは遠く離れていて見えもしません。

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明海と美祈は垂水駅北東の垂水小学校から名谷あじさい公園まで約2.7kmを歩いて来た事になります。

公園の真上には巨大な高速道路が走っていて、大きな影を作ってくれている。なんだかSFチックな光景だ。(P119-120)


この通り阪神高速高架下に公園があります。

藤棚の下のベンチ、「隣に大きなグラウンド」(右端)も実在します。



第2章扉絵で名谷あじさい公園から見た阪神高速の高架が描かれています。ライトノベルのイラストで実際の風景を元にした背景は珍しいです。ちなみにイラストレーターは「狼と香辛料」の文倉十さん。


ここに注目。


名谷あじさい公園から更に北へ。
P122 「紳士服のチェーン店」の建物は自転車屋(サイクルベースあさひ名谷店)。

柚耶さんが訪れた2008年当時で既に自転車屋でしたが、「洋服の青山」の文字がうっすら見えていました(旧・洋服の青山 神戸名谷インター店)。Googleストリートビューでこの状態で見られます。


西落合橋歩道への階段がP129「高台にある公園」への階段?高台にある公園は周囲に無いので、この階段の上に架空の公園がある事になっているようです。ここは須磨区

階段の上から。場面的にここで日が暮れていてはいけないのだけどorz

私たちの横を黄色いバスが下っていき、小ばかにしたようなクラクションを鳴らした。行き先には学校のすぐそばの最寄り駅の名前が書いてあった。(P131)



P132 カナ、リアに声をかけられた「団地から少し下った雑木林」

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道を戻り、垂水区(名谷町)と須磨区(菅の台)の境界付近。奥畑バス停から少し上がった所です。話の順序と違いますが階段より先にここへ来た方が良いです。


明海が目指した地下鉄の駅(P121)=神戸市営地下鉄名谷


三宮以東から垂水へは「垂水・舞子1dayチケット」が便利です。三宮版なら阪神三宮から800円で山陽西舞子までと、山陽バスが乗り放題。2011年3月までは販売されているのは確実ですが、以後はHPで確認して下さい。発売場所は
阪神版】1300円 発売場所:阪神梅田・尼崎・甲子園・御影・三宮の各駅長室
【三宮版】800円 発売場所:阪神三宮駅長室(三宮以東では利用不可)
三宮版は阪急三宮では販売していませんが、阪急三宮での乗下車、阪急線内で下車時の清算が可能です。

阪神電車 お得なきっぷhttp://rail.hanshin.co.jp/ticket/otoku/

ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート」舞台探訪レポートは以上です。


烏子と神野真国のバンド「ベネズエラ・ビター」の由来となった(P48参照)、<ベネズエラビター>チョコレート


森田季節さんのMF文庫Jの既刊5冊と「みみっく!」。ベネズエラ〜の続編に当たる「プリンセス・ビター・マイ・スウィート」は京都市山科区、「原点回帰ウォーカーズ」は神戸市西区(と微妙に西宮)が舞台になっています。
左上の「みみっく!」はコミックマーケット75(2008年12月)で発売された、MF文庫Jの17人の作家、15人の絵師による同人誌。平坂読さんの「ラノベ部」3巻作中で内輪ネタ的に触れられてました。


森田季節さんの新刊「不堕落なルイシュ」が6月25日にMF文庫Jで発売されます。
http://www.mediafactory.co.jp/c000051/archives/025/004/25424.html


今までMF文庫Jでのみ本を出していた森田季節さんですが、同じ6月25日に一般文芸で角川書店から「ともだち同盟」が発売されます。 
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201003000224

この作家、クセになる!初夏の神戸でおきる不思議でビターな青春ストーリー;千里、朝日、弥刀。二人の女子と一人の男子。三人の高校生はある誓いを交わし”ともだち”になった。
しかし、その「世界」は朝日が弥刀に告白したことで揺らいでいき、ある日……。新世代青春小説の旗手、誕生!!

舞台は神戸と明記されてますね。ビターという単語を使っていますが、ビター・マイ・スウィートシリーズに原点回帰するのかな?


追記
2010-8-21 森田季節「ともだち同盟」舞台探訪@JR関西本線大河原駅



6月22日、新刊2冊のamazonリンクを追加

*1:http://www.tarumi-kanko.jp/material/ancient/tarumi_3d.html

*2:2009年9月発売の「桜木メルトの恋禁術」では「兵庫県神戸市出身、北陸在住」になっている